クリエイターとしての物書きが頂点に立つ未来はもうすぐです。
物書き、つまり、作家、本を書く人のことです。
以前別の動画でもご紹介した本『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』ですが、今回はこの本のこの部分から私が感じた内容です。
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ブロックチェーンはこのプロセスを後押しする。アーティストは自らの作品の変更不能なデジタルレコードを作成することができるようになり(海賊版の作成は不可能になる)、また取引コストがゼロあるいは無視できるほどわずかになるので、マイクロペイメント (小額決済)というコンテンツ・クリエイターの夢が実現する。これこそインターネットが誕生して以来、物書き、アーティスト、映画監督、漫画家、ジャーナリストらが待ち望んできたことだ。仲介業者の手を一切借りず、作品を直接ファンに届けられるようになる。クリエイティビティの世界が真の実力主義になる(少なくともそう言われている)。
この中で”物書き”、つまり多くの人の悲願でもある”本の出版”についても、これまでの常識が変わる可能性について考えて見たいと思います。
商業出版のハードルが高い理由
たとえば、ビジネス書の場合、ページ数にして250ページ、値段にして1500円程度で売れる本にする必要があります。
つまり、出版者から本を出させてもらうためには、大前提としてこのボリュームに応えるだけの内容が必要になります。
このボリュームの本となると、文字数として10万文字程度になります。
では、10万文字のコンテンツのボリュームはどれぐらいか?
Webページで考えて見ます。
現在の悩み系キーワードの検索結果の上位の表示されるWebページは内容がしっかりしているものが多くて、1ページの文字数は3000〜5000文字です。
例えば、「本の出版の仕方」みたいな検索ワードです。
次にメルマガですが、一般的なメルマガも1通が同じぐらいの文字数のものが多くて、私のメルマガもこれまで配信したものは大体これぐらいの文字数になっています。
そこで、この5000文字を一単位として単純計算してみます。
そうすると、1冊の本には、Webページやメルマガで20本分のコンテンツ量が必要ということになります。
Webページもメルマガも、ノウハウというか話題を時間をかけてしっかりまとめた内容で5000文字になっていることを考えると、これの20倍ものコンテンツとなると相当の量であることが想像できます。
ところで、ビジネス本であれば、書く目的は伝えたいノウハウがあり、読み手もそのノウハウを吸収したいと思って読むわけです。
ところが、1つのノウハウを説明するのに、20ページ分ものコンテンツは必要ありません。
だからといって、「私のノウハウは50ページぐらいでしっかりまとめてお伝えできます」と主張しても出版社はクビを縦に振りません。
商業出版をする限りは、単行本であれば1500円という価格を付けられるボリュームの本を出版しないと利益が出ないからです。
逆に言えば、ほとんどのビジネス書は、1500円で売るために無理矢理250ページのボリュームを確保していることになります。
本は情報源としては圧縮率が低すぎると言われる理由はこのためです。
消費者からすれば、得たいノウハウを得るために、圧縮率の低い文章を読まされて、時間もお金も浪費することになるのである意味でいい迷惑とも言えます。
そして、この問題というか、商業出版の壁を破ってくれたのがKindleなどの電子書籍でした。
出版のハードルを下げた電子書籍
電子書籍を出版しようした場合に、国内でその手段はいくつかありますが、一番一般的になっているのがAmazonのKindleブックによるKindle出版だと思います。
そして、Kindle出版の場合は、極端にページ数が少なかったりしない限りは、商業出版の様なページ数(文字数)を求められることはありません。
料金設定も、販売条件によっては制限がありますが、基本的に自由です。
販売条件というのは、選択する印税率です。
紙での出版の場合、印税率は5~10%程度となりますが、Kindle出版の印税率(ロイヤリティ)は35%か70%を選択できます。
70%の方が魅力的ですが、こちらを選ぶと条件が発生します。
具体的には、Kindleストアでの独占販売、値段設定幅が250~1,250円といった条件が課されます。
次に、AmazonのKindleブックなどのようなプラットフォームから電子書籍を出版すると次の様なメリットがあります。
- 決済システムが用意されている
- 書籍が複製されにくい
- 販売チャンネルに載せてもらえる
決済システムの方は、今でこそ素人でも容易に自前でカード決済システムを組み込む環境ができつつありますが、まだハードルは高く、プラットフォーム側に全部お任せできるのは多くに人にとって魅力的です。
次に、書籍が複製されることを防ぐ、つまり無断コピーされないようにするのは電子書籍の永遠の課題とも言えます。
電子書籍を自前で作った場合、例えばPDFファイルなどで手軽に作ることができますが、それと同時に容易にコピーすることができるため、無断複製された時点で有料コンテンツとしての価値を失います。
Amazonが、KIndleブックというのプラットフォームでのみ閲覧できる仕組みを提供してくれているおかげでこの無断複製のリスクは大きく下がります。
最後に、販売チャンネルについては、Kindleブックの場合は言わずと知れたAmazonで、他の書籍と同列に検索対象にしてもらえます。
決して積極的に売ってもらえる訳ではありませんが、検索にヒットすれば売れる可能性があるので、著者は何もしなくてもコストゼロで売れる可能性があります。
少なくとも、自分のWebサイトで販売しているよりは多くの人の目に止まるはずです。
AmazonのKindleブックのようなプラットフォームであれば、伝えたいノウハウをコンパクトに、例えば50ページにまとめた書籍も出版できます。
それ以前に、「50ページにまとまた書籍になりますがいいですか?」などというお伺いを立てる必要もありません。
また、ノウハウを受け取る側からすれば、無駄な時間や労力を使うことなく効率的に学ぶことができます。
中抜きをスルーする技術革新
ただ、AmazonのKindleブックなどのプラットフォームには、いくつかデメリットがあります。
それでも、ハードルの高い商業出版に比べれば、十分にリーズナブルな環境を与えてくれているとも言えます。
ですので、個人的には、現時点では、個人的な電子書籍の出版については、AmazonのKindleブックなどのプラットフォームを利用する方法で十分だと思います。
ただ、近い未来には、少額決済とコピー防止の技術革新によって、もっと優れた環境が手に入るはずです。
そうなると、プラットフォーマーによる中抜きを完全に回避できる時代になり、物書きなどのクリエイターが頂点に立つことになります。
まず、少額決済(マイクロペイメントとも呼ばれますが)によって、この技術によって手数料がゼロあるいはほとんど無視できるレベルまで下がると言われています。
ちなみに、現時点では、Stripeを使うと3.6%の手数料がかかります。
ただ、電子書籍の場合は、仕入れコストがほぼゼロなので、この3.6%程度の決済手数料はさほど気にならないという話もあります。
もっと、意味があるのはコピー防止機能の方です。
電子書籍はコピーコストがほぼゼロなのが強みですが、その反面で誰にでも無断コピーされるという弱点があります。
このコピー防止の機能が、近い将来ブロックチェーン技術で誰にでも手軽使えるレベルまで落とし込まれるはずです。
もし、個人で作った電子書籍のコピー防止が可能になれば、特定のプラットフォームに手数料を支払う必要がなくなります。
自前のWebサイトで売ることができるからです。
例えば、AmazonのKindleブックの場合は、印税率が35%の場合は残りの65%が手数料になります。
印税率70%の場合は30%に収まりますが、それでも安いとは思えませんし、それ以上に前述の販売条件は邪魔です。
ただ、プラットフォームを使わなくなると、その販売チャンネルで売ってもらえなくなるので困るとお考えかも知れません。
結論から言いますと、Kindleブックとして出版しただけでは、Amazonの傘下にいてもさほど売れません。
これは、どこのプラットフォームでも同じで、例えば楽天市場などにネットショップを出店した場合も何もしなければほとんど売れません。
自サイトで電子書籍を売るとなると、売るためのマーケティングをする必要が生じて面倒にかんじますが、それは現在のプラットフォームで売る場合でも同様に必要ということです。
そう考えると、決済と無断コピーの問題がなくなると、プラットフォームに留まる理由がなくなります。
ちなみに、自分の電子書籍を売るための一番シンプルな方法は、ネット広告を出す方法です。
たとえば、AmazonのKindleブックの場合は、前述の通りに、低くて30%、高いと65%もの手数料を引かれていたわけですから、その金額をそのまま広告費として投入できるということです。
もっと言えば、デジタルコンテンツの強みは、コピーコストがほぼゼロということですから、赤字になる限界まで広告を出せることになります。
もし、将来本当にマイクロペイメントで手数料がゼロになるなら、1000円の書籍を売るのに999円まで広告費が使えることになります。
もちろん、これでは1円しか利益が出ませんが、それでも100部売れれば100万円です。
100万部は話が大きすぎるのでもう少し現実的に考えます。
例えば、1000部売れることを前提に考えれば、900円広告費をかけても100円×1000部で10万円が稼げることになります。
また、電子書籍のいい点は、紙の本と違って絶版がないことです。
本の内容が普遍的であれば、ずっと広告を出し続けて売り続けることも可能だということです。
また、早い段階に1000部売れなくても、手数料を何十%も取られている状況から比べればやる気が断然高くなるのは容易の想像できるはずです。
継続してマーケティングを続けたり、新たな書籍を書いたりするモチベーションが継続するはずです。
ただ、リアルの本屋さんに自分の本が並ぶことを悲願にしている方もいらっしゃると思います。
つまり、本で稼ぐのではなく、本を出して作家になることが目標の方です。
事実、商業出版に成功すれば、作家という箔も付きますし、本を出している人ということでビジネスにも有利に働きます。
ただ、現実には、全国の大型書店に平積みしてもらうためには、初版で5000部程度の発行部数が必要です。
ただ、新人作家の場合は、初版の発行部数は大抵2000部程度に留まります。
つまり、商業出版に成功しても、「作家です」と自称することは可能ですが、全国の書店に平積みされる訳ではないと言うことです。
また、処女作が売れなければ2冊目の話も来ません。
これが商業出版の世界の現実なので、本当の意味で物書きとして生きていきたいなら新しい時代には商業出版にこだわる必要はないかもしれません。
近い将来に訪れるクリエイターが頂点に立つ時代まで着々と準備をしておけばいいのではないでしょうか?