偏った情報しか入らなくなるSNSを使っていると多様性がどんどん損なわれます。意味のある情報収集をするためには、偏りのない多様性は必須です。そのためには、地道に多様性を高める行動を増やす、そして、多様性を損なう行動を避けるしかありません。

意味のある情報収集をするためには、多様性をいかに維持できるかがポイントとなります。

ところが、普段私たちが使っているインターネットのメディアはこの多様性の真逆となる偏った情報だけを私たちに届けてくれています。

エコーチェンバー現象とは

エコーチェンバー現象とは、似たような意見を持った人が集まって、同じような情報のやり取りをすることにより同質の考え方が増幅されて、異なる意見に触れる機会を失ってしまうことです。

閉じた空間に音が反響する現象からエコーチェンバー現象と呼ばれています。

開かれたインターネット空間にアクセスしているのに、実は閉じた空間に留まってしまっているという笑えない状況です。

具体的には、SNSなどを利用する際には、自分と似た興味・関心を持つユーザーの投稿ばかりが表示されます。

これは、FacebookやTwitterなどの場合は、アルゴリズムとしてそのように設計されています。

ユーザーの過去の投稿や購読の履歴からAIが判断をしているわけです。

このようなアルゴリズムにしている方が、利用しているユーザーは心地よいのでSNSへの滞在時間が延びます。

ただ、このような状況は、ユーザーとしては限られた情報にしかアクセスできないので、情報収集の観点からは、多様性が損なわれていて好ましいとは言えません。

また、FacebookやTwitterなどの典型的なSNS以外のメディア、例えば、Yahoo!ニュースやYouTubeなどもそうです。

グノシー、スマートニュースなどのニュースアプリも全く同じです。

どれも、表示される情報が非常に偏っています。

私はこのことに気づいてから、ニュースアプリについては特にひどいのでスマホから削除しました。

Yahoo!ニュースについては今でも読んでいますが、かなり偏った情報が表示されているとの前提で、必要最小限の情報収集のために読んでいるつもりです。

多様性の反対は単一性

情報収集における多様性の必要性は言うまでもありません。

特に、ビジネスにおいては、偏った情報だけを集めていてもほとんど無意味だと思います。

物事を正しく認識して問題点などに気づくためには、自分の信念とは真逆の意見にも耳を傾ける必要があります。

信念を曲げる必要はないですが、異なった意見があること、そして具体的にはどういった意見なのかを認識しておく必要があります。

ところが、エコーチェンバー現象にハマってしまっていると、この多様性がゼロで単一性に突き進んでしまうわけです。

また、多様性を受け入れる能力とは、変化に対応できる能力とも言えます。

ビジネスの世界においては、いかに変化に対応できるかで勝負が決まるケースが多々あります。

特に、これから先は変化が激しい時代と言われていますので尚更だと思います。

all-or-nothing(オールオアナッシング)の考え方に偏りがちな人も多様性に欠けていると言えます。

「妥協を許さない」と表現すると聞こえはいいですが、要するに「融通が利かない」ということです。

自分の気に入らないことはすべて排除するという姿勢ですので、多様性には欠けています。

NHKの大河ドラマで「篤姫」というのがありましたが、篤姫が母親の教えとして常に心にとめていた言葉として「一方聞いて沙汰するな」というのがありました。

私はこの教えにすごく感銘を受けたのですが、これも多様性を受け入れる姿勢だと思います。

エコーチェンバー現象にはまっていると、一方の意見を聞いただけで偏った判断をすることが多くなりますから、この考えを思い出すだけでも避ける効果があると思います。

もちろん、実際には、多様性を受け入れるというのは言うほど簡単ではありません。

ただ、このことを意識していて頭にあるかどうかだけでもかなり違うと思います。

少なくとも、エコーチェンバー現象にどっぷりハマってしまっていると、そういった考えを持つことすら難しくなるということです。

偏りを避けるための対策は

言い換えれば多様性を高める方法と言えますが、これだけをやれば大丈夫というシンプルな対策はありません。

可能な限り多様性を高めることに取り組み、逆に多様性を損なうことを避けることを地道にやるしかありません。

すぐにできそうなことは、SNS断ちかもしれませんが、これまで続けて来たオンラインでの交流ができなくなるので、いきなり絶つのは無理でしょう。

そこで、SNSは偏った情報しか手に入らない場所だと心しておくだけでかなり違うと思います。

次に、意識の問題ですが、人は基本的に確証バイアスという傾向を持っていることを理解しておく必要があります。

確証バイアスというのは、言うなれば、自己を正当化したい欲求のことです。

すなわち、人は基本的に、自己を正当化することだけを目的に行動してしまい、それに反することについては避けてしまう傾向があるということです。

本能に近いので抗いにくいですが、ここで頑張ると差が付きます。

自分の正当性を否定するような情報に触れるのは勇気がいりますが、この行動を避けないようにするわけです。

逆に、これができないと偏った傾向は変わらないということです。

次に、情報収集のための王道とも言える本についてです。

本からの情報収集は、自分の好みの本を選んでも、内容を読んで気づくことも多いためある程度の多様性は確保できます。

ここが、SNSを始めとする今のインターネット上のメディアとの決定的な違いです。

ただ、そうは言っても好みの本ばかり選んでいては偏ってしまうのは避けられません。

そこで、自分の意思では選ばないような本を読むような工夫をするといいと思います。

例えば、売れている本については、つまりランキング上位の本については、取捨選択の判断を挟まずにすべて読むとかです。

また、自分が嫌いな人や考えが異なる人が書いている本、あるいは勧めている本をあえて読むとかです。

こういったことを苦痛とは思わずに、そういう人たちはどういう考えを持っているのかについて改めて好奇心を持って取り組むと無理なくできると思います。

私の経験では、時には自分が間違っていたり、勘違いしていたことに気づいたりする、目から鱗が落ちるようなことが多々あります。

自分の好みだけで情報収集していては、決して気づけなかった貴重な体験でした。

また、読む本の選び方については、キュレーターに選書をお任せするユニークなサービスもあります。

恐らく、北海道の”いわた書店”さんの「お任せ選書一万円サービス」というのが最初だと思います。

メディアで取り上げられて申し込みが殺到したようで、今は受付を中止しているようです。

恐らく、探せば他の書店でもやっているところがあると思います。

いずれも、自分の偏見が介在しないで選ばれた本を読むことになるので何らかの気づきが期待できそうです。

以上のようなことは、世の中の9割以上の人がやっていないことなので、こういった行動を取るだけでかなり幅の広い考え方ができるようになると思います。