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”来場者12万人から40万人へ「V字回復」”
どこかでよく見るような見出しですね。
これは、先日私がネットで見つけた記事の見出しです。
なかなか内容があったので今回の題材として使わせてもらいました。
お金なし、知名度なし、人気生物なし
そこは、愛知県の蒲郡(がまごおり)市にある竹島水族館、いわゆる地方にある弱小水族館です。
私は、蒲郡のことはよく存じないのですが、温泉街もあってそこそこ人が集まる要素はあるようです。
ただ、この水族館は、
お金なし、知名度なし、人気生物なし
という人口減少社会においてはこの先は閉鎖まっしぐらの環境にあった水族館でした。
更に、建物は古く、館内も狭くて、すべて見て回るのに10分もかからないしょぼい水族館です。
経営危機から行列のできる水族館へ
そして、市が経営を手放して、一次は閉鎖寸前にまで追い込まれます。
それが、NHKスペシャルの題材になるような感じで、”休日には入場待ちの行列ができるまでの水族館”になったという話です。
胡散臭いですねー、ホンマでっかって感じです。
もちろん、実際の話はそんなに単純ではなかったようです。
マーケティング的に言うと、この水族館のV字回復は、プロダクトアウトからマーケットインへの移行に成功したケースです。
実は、このプロダクトアウトからマーケットインへの移行というのは口で言うほど簡単ではありません。
特に、組織が古い場合にはほぼ不可能と言われています。
理由は、変化に臆病な古い従業員が邪魔をするからです。
プロダクトアウトとマーケットイン
その前に、プロダクトアウトとマーケットインについて解説します。
プロダクトアウトとは、自分たちのやりたい商品・サービスを開発して、それをどのように販売するか考えるパターンです。
マーケットインは、まったく方向が逆で、お客さんのニーズを汲み取って商品・サービスを開発するパターンです。
もうお分かりだと思いますがプロダクトアウトは完全に時代錯誤のビジネススタイルです。
今の時代は、マーケットインで発想してビジネスをしないと99%はうまくいかない時代です。
マーケットインへの移行に成功した理由
ご多分に漏れず、この水族館の経営者もプロダクトアウトでガチガチの発想しかなかったようです。
ところが、ひょんなことから顧客第一主義を考える新入社員が入ってきて、彼らによってマーケットインを実践することができてしまったのです。
普通は、組織になっていると、既存の従業員が保守的になり”変化”を邪魔します。
つまり、このようにビジネススタイルを180度変えるなどということはほぼ不可能です。
では、なぜその水族館ではそのようなことが可能だったのか?
その理由は、水族館の経営危機を知った先輩社員がごそっとやめてしまったからなのです。
そして、新入社員が自動昇進しました。
結果、顧客第一主義で水族館の立て直しにまい進できたということです。
もちろん、話はそんなに単純ではなかったようでかなりの苦労があったようです。
ただ、それでも一番の難関は、保守的な従業員が変化を妨害することによるものです。
施策は他でもやっていたこと
事実、この水族館が人気水族館になる過程で行った施策はそんなに目新しいことではありませんでした。
タッチングプールという、水族館の生き物に触れる”さわりんぷーる”というサービスを始めたのです。
既に、やっている水族館がいくつもあるそうです。
他の水族館との違いは、希少な深海魚が豊富だったことぐらいのようです。
(蒲郡市の漁港は深海魚漁が盛んで、竹島水族館は漁師との協力関係があった。)
ただ、この深海魚が決定打ではなかったはずです。
お客様は何を望んでいるのか?
重要なのはこの水族館の若手の方が、マーケットインに本気で取り組んだことです。
一般的に、水族館の従業員になるような人たちというのは、どういった人でしょうか?
言ってしまえば”魚マニア”です。
お魚が大好きな人たちです。
では、水族館に来るお客さんは魚マニアでしょうか?また、そこまで行かなくても魚を学ぼうと思って来場する人が多いでしょうか?
答えは、ノーです。
水族館への来場者のほとんどにそんな人たちはいません。
マーケティングとは泥臭い施策の積み重ね
さて、マーケットインでどのようなサービスを提供すればいいのか?
この水族館のやったことは、”魚に興味を持つきっかけを提供できる水族館を作った”ということです。
これが、”一般のお客さんが求めること”だった訳です。
このことを見いだすために、水族館の若手は、来場者の観察を徹底的にしたそうです。
「マーケットイン」などとカタカナ・横文字で表現するとカッコいいです。
でも、実際にやることは非常に泥臭い作業です。
基本的にマーケティングというのは、こういった泥臭い作業の積み重ねです。
何か一発効果的な施策を打てばうまくいく、などという幻想をお持ちなら捨てた方がいいです(笑)
ブログ集客も理屈は全く同じ
ちなみにSEOにおける検索ワード探しもマーケットインです。
自分の好きなことをブログで発信しても誰も読んでくれないのは、それがプロダクトアウトだからです。